設計1年生が作った独ステを評価してみよう

  • 前書き
    お久しぶりです、ケシゴムです
    今回は高専ロボコンも終わり身辺整理をしていてだいぶ前に作った独ステ(独立4輪ステアリング・Swerve Drive)が出てきたのですが、今見ると設計的にダメだなーと思う箇所がたくさんあったので、捨てるくらいならレビューしてから捨てようと思い記事にしてみます!

  • 作られた経緯
    もともと差動ステアリングは作ったことあったのですが、ちゃんとした独ステを作ったことはなく、さらにちょうど買ったBLDCが余っていたので作ってみることにしました。 また当時、東大RoboTechのステアに感化されたこともあり、かなりRoboTechを参考にして作ってました。 ちなみに足りてないパーツなどもあるため完璧な状態ではないです。

  • 外観

  • レビュー
    分解しながらダメなところと一緒に機能を説明していきます

    正面
    まず正面からです。正面から見るだけでわかる、クソ重いです。ギヤが多いですし土台のプレートがめちゃくちゃでかいです。このユニットは回路抜きで1.6kgほどです。 駆動用のモーターには1500WのBLDCが付けられておりギヤで1:4に減速されています。
    裏側
    次に裏側です。操舵用のギヤです。後述しますが操舵用のモーターにはRZ-735が使われており、そのモーターに直接ギヤがついています。左の軸は操舵角計測用のエンコーダに用いる軸です。本当はここにもギヤを付ける予定でしたが制作が間に合わなくて何もついていません。操舵用のギヤはモジュール1なのですが、手に刺さって痛いです。
    BLDCユニットを外した状態
    BLDCユニット
    BLDCユニットはアルミフレームに掘られたタップを用いて固定されています。またアルミフレームとの固定箇所には段付き加工がされており組立精度はある程度出ています。しかし本当にこんなでかくする必要はあったのか、このダサい肉抜きは本当にこの形でよかったのか、いささか疑問が残ります。BLDCがMAXトルク出していれば多分曲がっていました。 また段付き加工したため、角の部分が鋭利になり指を切ることも多かったです。
    駆動ユニットを外した状態
    駆動ユニット
    H型POM製ベアリング
    次に駆動ユニットです。駆動ユニットと土台はH型のPOM製ベアリングでスラストを受けながら操舵の軸受けもこなしています。わりかし安定しておりこの方法は大型ベアリングを採用する必要が出てきたときに代替案として有効かもしれません。 H型のベアリングの固定には丸棒に段付き加工をし、タップを掘って固定していましたが今思うと板材で削り出せばよかったなと思います。丸形状だとネジを締める際に苦労します。もし次作るなら端の部分は六角にしようと思います。
    操舵ギヤを外した状態
    操舵ギヤ
    操舵ギヤにはタップを掘って駆動ユニットと固定しています。操舵ギヤには段付き加工をしていますが、駆動ユニットには間違えて表に段付き加工をしてしまったため、意味をなしていません。間違えてしまったせいで結果的にボルトのポケットみたいになってしまいました(´・ω・`)
    駆動用傘歯車
    BLDCからの伝達には傘歯車を使っています。これにより無限回転が可能となります。傘歯車のボス部分を軸とみてベアリングにはめています。先ほど説明したH型POM製ベアリングだけではガタついてしまうためPOM製ベアリングと反対側であるこの傘歯車部分にベアリングをはめることで操舵の軸ぶれを落ち着けています。傘歯車がトルクに耐えれるかは不明です。
    筐体安定化部分
    安定化パーツ
    一応駆動部分のグラつき安定のために板材を付けています。段付き加工されているので組立後はだいぶ安定していました。
    タイヤ用ギヤと駆動ユニット土台の干渉
    設計ミスでちょっとだけ干渉していまい、結果的に板材が削れていました。ちょっとギリギリ攻めすぎました。
    駆動ユニット分解
    様々な軸を固定する用の板材を外した状態です。ベアリングがあまりにも小さすぎます。いずれ壊れていたことでしょう。
    被駆動部1
    被駆動部1の分解
    被駆動部1段目です。傘歯車で回転を伝達し平歯車を回転させています。当時の加工班が「もっと高度な加工をしたい」と言っていたため、多段の軸を設計したのですが思ったほか難しかったらしく、加工時間がめっちゃ伸びました。これ以降僕は段付きの軸をなるべく出さないようにしています。出すとしてもミスミの加工サービスを使います。 また歯車たちと軸の固定はイモネジで行われているためあまりトルクを出すことができません。ロックタイトでガチガチに固定すれば使えるくらいにはトルクが出せると思います。
    伝達全体
    被駆動部2
    被駆動部2段目は平歯車で伝達しているだけです。しかしこの軸と平歯車はスラスト方向に特に固定されているわけではなく、すべり軸受けみたいになってしまっています。ベアリングは軸の一番外側に設けられていますが、それ以外のところで回転してしまうため摩耗が見られました。ちゃんと圧入なりするべきだった...
    タイヤとタイヤ用軸
    タイヤ正面
    タイヤ裏側
    タイヤの部分です。タイヤにはベアリングを入れており、駆動軸を設けるわけではなくタイヤ自体が回転するようになっています。こっちのほうが設計スペースとか加工が楽だと思います。タイヤにも平歯車がついているわけですがこれがめちゃくちゃ重い。肉抜きするなり自作するなり何かしら対策が必要です。
    ウレタン型
    ウレタン型の中身
    タイヤはウレタンで自作しています。まずウレタンが臭すぎます。制作中は手が何とも言えないにおいにまとわりつかれ、洗っても取れませんでした。型はシリコンを使用しており、3Dプリンタでタイヤ全体を印刷->シリコンで型を取る->3Dプリンタで実際のホイールを作る->ウレタンを流し込む、といった手順で制作しました。 使用したウレタンは硬度がA90もありロボコン用のタイヤにはあまり向きませんでした。ウレタンは最近国内販売が消えてしまったこともあり、ネットを探っていると海外で自作スケートボードをやっている人たちがおり、そちらで使用しているウレタンを参考にし購入しました。(買った場所は忘れちゃいました)値段は9000円くらいだった気がします。
    舵角検出用エンコーダ部分
    エンコーダ外した状態
    操舵のほうに戻ります。操舵角検出にはエンコーダを使ってます。ゼロ点検出用にはホールセンサーを用いたものを作ろうとしましたが未遂で終わりました。エンコーダ用の軸はグラついていしまうため3Dプリンタでスペーサーを作ってそこにベアリングをはめ込むことで対処しました。
    アルミフレーム用の段付き
    支柱用のアルミフレームを固定する部分には上下それぞれ段付き加工されています。アルミフレームを使っている理由は拡張性が高いからです。ゼロ点検出センサやBLDC用のMDからステアユニット制御用の回路まであらゆるものを簡単に付けれると考えたからです。しかしちょっと重いしでかかった。
    操舵のモーター固定部分
    今回操舵のモーターにはRZ-735を使っており設計当初から「トルク足りんくね?」って思っていました(計算はやり方わからなくてやっていなかった)。そのためすぐに対処できるようにIG32が取りつく用の穴もあけていました。案の定RZ-735はトルクが足りなかったのですが、その時の実験で萎えてしまったこともありこのステアは完成を迎えないまま終わってしまいました。反省点としては、わかっている失敗は避けてやる気を損なわないようにしようということです。

  • 最後に
    このステアは負の遺産であります。しかし分かっていても同じ道を通ってしまう後輩がたくさんいると思い今回この記事を起こしました。豊田Bの設計者の後輩たちはこれを見て同じ失敗をしないようにしましょう。
    次はダイレクトドライブのちっちゃいステア作って回路制御含めて全部作ろっかな~
    以上です。